1 商標法の保護対象

商標とは、事業者が自社の取り扱う商品・サービスを他社のものと区別するために使用するマーク(識別標識)です。消費者は、商品を購入したり、サービスを利用したりするときに、企業のロゴマークや商品・サービスのネーミングといった「商標」を一つの目印として選んでいます。商標には、文字、図形、記号、立体形状やこれらを組み合わせたものなどのタイプがあります。また、平成27年4月から、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標についても商標登録の対象となりました。商標法では、これらの商標を保護することにより、商標に化体した業務上の信用の維持を図ることを法目的としています。
したがって、新制度の下では、ブランド化戦略において、従来からの企業名、商品名、サービス名を権利化して保護することに加えて、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標の権利化を図ることで、企業ブランドを多面的に保護することが期待できます。


(「新しいタイプの商標の保護制度」(特許庁・平成27年1月)より引用)

2 商標権のブランド化に与える影響

商品の購入やサービスの利用の際に目印となる商標は、信用を積み重ねることによって、「信頼がおける」「安心して買える」というブランドイメージが増していきます。しかし、ネーミングやロゴマークを勝手に真似されて、品質の悪いものが出てくれば、ブランドイメージは低下してしまいます。そのため、商品やサービスに付けるネーミングやロゴマークを財産として守ってくれる「商標権」を取得することはブランド化に必須と言えます。商標権は、他社による使用を排除できる権利として、模倣品の出現を防止し、安心して購入できる商品・サービスであることを顧客に保証するのです。
商標権を取得するための商標出願は早い者勝ちルールとなっており、先に商標を使用していたとしても、他社によって先に商標登録をされてしまうと、以後の使用ができなくなる可能性さえあり、ブランド化の妨げになってしまいます。そのため、できるだけ早い段階で商標出願をしておくことが重要です。さらに、商標権は取得した国でのみ保護される権利ですので、海外で事業を行う場合には、それぞれの国で権利取得する必要があります。
このように、商標権を適切に取得すれば良いブランドが育つことになり、他方商標権の取得が十分ではないとブランド化に深刻な影響がでることになりえます。
企業のブランドを適切に保護するためにも、適切な時期に適切な範囲の商標権を取得することをお薦め致します。

ベンチャー企業であれば、最低限、社名とコアとなる商品・サービス名称については商標権を取得することが必要です。上場審査では、この点について必ずデューディリジェンスがなされます。商標取得を怠ると、上場直前になって慌てて商標取得を試みたものの、他社の先行登録商標があって取得できなかったために上場が延期となった、社名変更を余儀なくされたなどいうことにならないとも限りません。そのようなリスクを考えても、商標登録については早めに対策を取りたいものです。

参考記事:自社の製品に他社商標が存在するかどうかの調査方法