当社(C社)はおしゃれでクリエーティブな生活を提案するとのコンセプトのもと、デザイン化されたヘルスケア製品を提供するベンチャー企業です。このたび、そのコンセプトに沿ったおしゃれな意匠をもつ「血圧計」を開発し、「タスコ」と名付けて発売しようとしています。そうしたら、投資していただいているVCから、商標はきちんと取得したのか、という照会をいただきました。どうしたらいいのでしょうか。

一般に会社名や製品名・サービス名を決める場合、他人の商標権とバッティングしないかどうかをチェックした方がいいと思います。製品名を発表してから似た商標を保有している第三者から警告等を受けると、最悪の場合、製品名の変更等を余儀なくされ、かなりの経費がかかります。なぜならば、宣伝資料やウエブサイトを全て作り直す必要があるからです。また、商標権者から損害賠償を請求されたりすると、非常に後味が悪いことになります。

商標権の調査は特許庁が提供する無料のデータベースを用いて簡単に検索することができるのです。ここでは、実際の画面を参照しつつ、その方法を解説しましょう。

・まず、J-PlatpatとGoogle等で入力して検索してください。これが特許庁の提供する無料データベースです。そうすると、以下のような画面が出てきますので「商標」にカーソルを合わせます。プルダウンが表示されますので、「4.称呼検索」に入ります。

・そうすると、以下のような入力画面が現れます。ここで、「称呼」とは「読み方」という程度の意味ですので、「タスコ」とカタカナで入力します。(アルファベットの標章の場合も、その綴りに対応する常識的な読み方(通常は英語的な読み方)をカタカナで入力します。

しかし、ここで少々困ります。その下に入力すべき「区分」とか、「類似群コード」とは何でしょうか。

実は、商標は製品名称やマークの部分(聞き慣れない言葉で恐縮ですが「標章」といいます)と、これを使用する製品・サービスの分類の組み合わせで特定されます。本件では標章は「タスコ」ですので、「称呼」の入力欄に「タスコ」と入力しましたが、使用する製品の分類がわかりません。これが実は「区分」「類似群コード」なのですが、どうやって調べればいいのでしょうか。

・これを調査するのが、画面上方にある「製品・役務名検索」(赤枠)です。クリックしてみましょう。

「商品・役務名検索」と銘打った、別の画面が出てきます。この「商品・役務名」という欄に調査対象となる製品名、すなわち、ここでは「血圧計」と入力して、検索ボタンを押します。すると、以下のような検索結果が表示されます。

・「1」の行を見ると、「商品・役務名=血圧計」は、
区分:10 / 類似群コード 10D01
と表示されています。さて、ここでまた迷います。いったい、どちらを使えばいいのでしょうか。この区分と類似群コードとの関係を一言で説明することは難しいのですが、非常に簡単に言うと、
・商標登録出願をするとき:「区分」を願書に記載する必要がある
・商標の調査をするとき:同一の類似群コード内に似たような標章があるとアウト
ということですので、ここでは後者の「類似群コード」に注目します。

さて、これで商標の検索をする準備が整いました。

・上記のように、「称呼」の欄に「タスコ」、区分の欄は空欄として(使用しない)、類似群コードの欄に「10D01」と入力して検索ボタンを押します。そうすると、ヒット件数2件と表示されますので、「一覧表示」をしてみましょう。

・「血圧計」(類似群コード10D01)内で「タスコ」と似たような商標としては、「TASK」と「TASUKI」が表示されます。これらが法律的に「類似」とされるかどうかの厳密な判断は容易ではないのですが、このデータベースでは簡易的な指標として「種別」という欄が用意されています。「種別」欄が「01」の場合、特許庁としては「類似」だと考えているよ、ということだと言われていますが、「タスコ」の場合は、「TASK」と「TASUKI」いずれも種別「08」となっていますので、問題はないと考えられます*1


*1 この「種別」については特許庁のサイトのどこを見ても詳しい解説がありません。私の推測ですが、かつては解説を掲載していたところ、「種別01とされているのに登録を受けられた」とか、「種別が01以外だったのに拒絶された」とかいうクレームがあったのかもしれません。いずれにしても、種別が「01」の場合は、登録を受けられないリスクが高いので別の標章を検討すべきです。また、種別が「01」でなくても、登録を受けられるという保証はないので、微妙なケースの場合は専門家にご相談ください。

※本稿において掲載された図はいずれも特許庁の提供する知的財産権に関するウエブサイトであるJ-Platpatより引用しております。

(参考)
http://www.inpit.go.jp/content/100583489.pdf