ふたたびおしゃれヘルスケア製品のC社です。血圧計「タスコ」では無事商標登録をさせていただきありがとうございました。次は、電動歯ブラシです。今度は「もっと製品コンセプトがわかるような名前にしようよ」という当社社長の意向で、「クリーントゥース」という製品名を考えています。さすがに、これほどズバリの名称は誰も考えつかないのか、商標検索をしても先行商標は存在しないようです‥

なるほど。前回と同じように「製品・役務検索」をしてみると電気式歯ブラシの類似群は11A07のようですね。以下のように入力して検索してみました。

ヒット件数6件について一覧表示すると、以下のような画面となります。

たしかにおっしゃるとおり、「クリーントゥース」については誰も登録を受けていないようです。しかし、指定商品「電気式歯ブラシ」に標章「クリーントゥース」(Clean Tooth)‥?あまりにもドンズバ過ぎるような‥ ほんとうに今まで誰も考えつかなかったのでしょうか。

実は、商標法上、あまりにもドンズバな標章は登録を受けることができないと規定されています。例えば、指定商品「パソコン」に「PC」という商標権が設定登録されてしまったら、他の人はそれ以降パソコンのことを「PC」と表記できなくなるおそれがあります。指定商品「テレビ」に「TV」という商標権も同様です。こういう場合、つまり、その製品についてあまりにも当たり前すぎる商標のことを「識別力なき商標」といい、登録を受けられないというのが法律上の仕切りなのです。誰も登録を受けられないので、当然のことながら、商標検索をしても先行する登録商標は引っかかってきません。
指定商品「電気式歯ブラシ」に対する「クリーントゥース」は「パソコン/PC」「テレビ/TV」の上例より幾分はましですが、やはり問題があるという判断のもと、これまで登録がなされてこなかったのでしょう。「識別力なき商標」について、法律では以下の類型がこれに該当すると規定されています(商標法3条1項)。

一  その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
二  その商品又は役務について慣用されている商標
三  その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状・・(中略)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
四  ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
五  極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
六  前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標

例えば、上例の「パソコン/PC」「テレビ/TV」は第二の類型(その商品・・について慣用されている商標)に該当しそうですし、「電気式歯ブラシ/クリーントゥース」は第三の類型(その商品の・・品質、効能・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標)に該当するのではないかと思います。

したがって、「識別力のなき商標」を製品名等としてお考えの場合は、専門家にご相談ください。ひょっとしたらいい知恵を授けてくれるかもしれませんよ。


※より詳しく知りたい方は特許庁の商標審査基準、第3条1項をご参照ください。
https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/syouhyou_kijun.htm